全日本仏教青年会 全国大会2013 in 大阪

シンポジウム「東日本大震災から考える地域の再生・多様性」

全日本仏教青年会 全国大会2013 in 大阪/シンポジウム「東日本大震災から考える地域の再生・多様性」

震災後の地域再生や仏教の役割を再検討

全日本仏教青年会(村山博雅理事長)は7日、大阪府大阪市の真宗大谷派難波別院の南御堂で全国大会(主管=大阪府佛教青年会=増田友信会長)を開催した。シンポジウム「東日本大震災から考える 地域の再生・多様性」では、釈徹宗氏、中沢新一氏、玄侑宗久氏の3氏が出演。青年僧を中心に約300人が参集し、これからの地域のあり方を学んだ。開会式では村山理事長を導師に東日本大震災物故者の追悼と被災地の復興祈願を含め、法要を厳修した。開会式やシンポ後の懇親会では、(公財)全日本仏教会の小林正道理事長をはじめ各氏が祝辞。歴代執行部を務めた往年の青年僧も参加し、青年僧のさらなる活躍が期待された。

(『週刊仏教タイムス』2013年5月9・16日合併号掲載)

主催、主管団体挨拶

村山博雅 全日本仏教青年会 第18代理事長

この度のテーマである「東日本大震災から考える地域の再生・多様性」は、まさしくこの2年の間、私たち全国の青年僧侶が全力を以て携わってきた震災に対する切なる想いの発露であり、今だからこそ考えなくてはならない最大の主題であると考えています。

近い将来、日本社会と日本人の価値観が一つのパラダイム・シフトを迎えるにあたり、その過渡期である現在を、「歴史」「文化」「環境」「経済」「政治」「宗教」等様々な要素について、その地域性を文脈として学際的に見直すことにより、その中に存在する普遍的な真実を全国に発信しようという試みです。

この度の大会が、参加いただいた皆様方の元気や力につながっていくことを心から願うとともに、そこに見出されたそれぞれの真理が、地域の発展と被災地の再生の原動力の一つになりますよう望むばかりです。  合掌

村山博雅 全日本仏教青年会 第18代理事長
増田友信 全日本仏教青年会副理事長・大阪府仏教青年会会長

東北の事、それから日本の未来を考えた時、地域の再生・多様性が日本の活力を生み出すと考え、大阪を舞台に“これから”を考える全国大会をしたいと申し出、これに賛同し出演を快諾して下さった釈徹宗師・中沢新一先生・玄侑宗久師、多大なるご支援とご教導を頂きました全日本仏教青年会村山博雅理事長はじめ執行役員と加盟団体の皆様、大阪府仏教会・仏教青年会の皆様、大阪市仏教会・仏教青年会の皆様、大阪府下各市区仏教会会長様、協賛業者の皆様、会場を提供して下さった真宗難波別院様、そして事務局を務めてくれた黄檗宗・九島院の奥田穂積師に、心より感謝と御礼を申し上げます。

子どもたちに、或いはまだ見ぬ子孫のために、健全な社会を残せるよう努め、より良き生き方を伝えていくことは今を生きる者の責務。そのティピング・ポイント(少しの傾き)となる事を願います。  合掌

増田友信 全日本仏教青年会副理事長・大阪府仏教青年会会長
小林正道・全日本仏教会理事長
小林正道・全日本仏教会理事長
井桁雄弘・全日本仏教会監事・大阪府仏教会会長
井桁雄弘・全日本仏教会監事・大阪府仏教会会長
佐藤功岳・全日本仏教青年会第7代理事長・全日仏青支援の会幹事長
佐藤功岳・全日本仏教青年会第7代理事長・全日仏青支援の会幹事長

三回忌に福島で慰霊・復興の祈り

全日本仏教青年会の全加盟団体は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災による被害を受けた被災地に寄り添う支援活動を現在まで継続してきた。昨年3月11日の被災地での慰霊・復興祈願法要に続き、今年も同日、福島県の福島市音楽堂で追悼慰霊・復興祈願法要並びに復興イベント「音と祈り、未来への光」を厳修した。法要は、声明や和太鼓など各宗派、各青年会の特徴を生かした法要が執行された。

三回忌に福島で慰霊・復興の祈り

地元福島を中心に仮設住宅で避難生活を送る人など、約1000人の一般参加者と全国から集まった青年僧約200人が会場に参集。地元福島県出身で俳優の西田敏行さんも参列し、故郷への感謝を語った。地震発生時刻の午後2時46分、会場全体で共に黙祷を捧げ、被災地の祈りに寄り添った。西田さんが主演し、震災直後の遺体安置所を舞台にした映画『遺体―明日への十日間』の予告編も上映され、薄暗い会場の中で、涙をためた参加者の目が切なく光っていた。

地元福島県出身で俳優の西田敏行さん

青年僧の支援活動 被災地に寄り添った2年間

福島県での除染活動の様子。全国曹洞宗青年会災害復興支援現地本部のコーディネートで、地元の住民とともに除染ボランティアに参加した。地域、宗派を越えたネットワークが活かされた。(2012年3月)

福島県での除染活動の様子

宮城県亘理郡亘理町にある舘南仮設住宅の行茶による傾聴活動に参加。大阪仕込みのたこ焼き、奈良伝統の吉野葛、こだわりのコーヒーで交流を温めた。あまりの反響に地元の社会福祉協議会も驚いていたという。(2012年3月)

宮城県亘理郡亘理町にある舘南仮設住宅の行茶による傾聴活動に参加

被災地、日本の再生への願いも込めて奈良・東大寺で営まれた仏法興隆花まつり千僧法要。全国から多数の青年僧が出仕し、訪れていた多くの参拝者の耳目を引いた。(今年4月)

被災地、日本の再生への願いも込めて奈良・東大寺で営まれた仏法興隆花まつり千僧法要
シンポジウム「東日本大震災から考える 地域の再生・多様性」

先の見えない震災後の日本 地域と仏教の観点で考察

震災で見たコミュニティーの原型

シンポジウムは、釈氏をコーディネーターに進行し、まず震災後の地域コミュニティーの再生について福島県在住の玄侑氏が意見。これまで地元福島の市町村についてあまり知らなかったが、震災を契機に「どのような地域があるのかつぶさに分かってきた」とし、自治体の中では「村が一番立派だった。特に川内村、葛尾村、飯館村は、村長自身がほとんどの村民の顔を知っている。このコミュニティーの密度の濃さは、非常時には何物にも代えがたい」と話した。

玄侑宗久氏
玄侑宗久氏

避難区域からの住民の移転についても、「町以上の所では、平成の大合併でくっついたばかりで、バラバラになる。まとまった移転には時間がかかる」とし、震災で共同体としての村の絆の強さが鮮明になったことを指摘した。

非常時のコミュニティーのあり方については、避難所などで自然発生的にリーダーが生まれ、「上から管理するのとは違うコミュニティーの原型を見た気がした」と被災時の状況を回顧。また何か一つのことを共同体で行う場合、「神社や寺院では、何でも皆でやるという古い共同体の仕事の仕方が残っている」とコミュニティーにおける神社仏閣の関わりも述べた。

中沢氏は、古い共同体の構成員が複数の役割をこなす例を提示。「例えば“百姓”にはあらゆる職業という意味があり、元々は農民に限定されていなかった。それが中世までの日本人のあり方だった」とし、「東北の農民の方を見ると、この人達は“百姓”だなと思うことがある」と古くから地域に宿っている人々の生きる力について述べた。

仏教 VS グローバル経済

釈氏は「現代社会のようにどんどん細分化されていく中で、大きなつながりを感じて暮らすのは今が分岐点ではないか。自分が今立っているこの土地がどれほど重層的であるか、どれほどのものが蓄積されているのかを感じる作業が大事になる」と提言。

中沢氏は釈氏の提言を受けて、「土地が持っている地域性、重層性は、今のグローバル経済にとっては邪魔者。

釈徹宗氏
釈徹宗氏
この邪魔者を消すというのが世界中の大きな流れで、TPPもその一つの表れだ。世界中同じ規格で労働力や資本を動かそうとする動きの中では、地域は邪魔になる」と地域と世界の関係性を俯瞰。「しかし、TPPよりも重要なのは、その先にある世界観ではないか。地域が作っていたバリアーを壊す流れに立ち向かっていく原理を考える時、おそらく仏教もバリアーの一つとしてグローバル経済が壊したいものの一つかもしれない」と仏教対グローバル経済という対立軸を示唆した。
大阪の地域性と宗教性

続いて、中沢氏が提唱する古代の地理にまで遡って地域を考える「アースダイビング」の観点から、開催地・大阪の地域性を考察。古来海であった教界線上には、埋葬地が作られたことから、現在でも古代の岬にあたる地形に宗教施設である神社仏閣が多くあることを説明。

津波被害があった被災地や大阪も例外ではなく「大阪は上町台地が宗教的背骨。土地の突端は常に聖地として扱われており、それに沿って、四天王寺、住吉大社があり、熊野に続いていく」と大阪の宗教都市としての側面を解説した。

中沢新一氏
中沢新一氏
これからの青年僧へ

シンポジウムの最後は、被災地での支援活動など様々な形で社会の問題に取り組む全国の青年僧にパネリストの2氏からメッセージが贈られた。玄侑氏は、「やっぱり何かを生み出すことが大事。仏教の力は、相対化する力。一本化はしない。まとまりが良すぎると新しいものが生み出されない。割れてもよい。組織をそのまま同じように続けることがストレスになることもある。タテが強すぎると面白い組織にならない。横のつながりを伸ばして、青年僧の生産性に期待したい」とエールを送った。

中沢氏は「仏教が言っているのは二つに展開しているものはない、それは幻影だということ。何も無いと言っているのではなく、おおもとである“不二”と言うような初期化された状態があると言っている。その意味では、十分世界が発達して色々なものが分化されすぎているので、もう一回初期化するという考えも必要。仏教はまだこれから先がある思想。21世紀的な考えをはらんでいる。ただ、それを実現するには色々なものが付きすぎた。これを払う人々が出てほしいし、それは仏教青年会だと思う」と青年僧の活動に期待をかけた。

宗教者の社会貢献、利他行に詳しい稲場圭信・大阪大学大学院准教授の話

若い僧侶の中で、社会の様々な問題、震災だけでなくそれ以前からの自死念慮者、貧困など、現実的な社会の苦に向き合う人が増えている。教団の上からの指示ではなく」、それぞれに気が付いた人たちが、動きだしたと感じている。

自分自身の仏教的な利他心の発露から、社会の苦の問題に心を寄せて、自らの課題として実践している。一般社会にも徐々に若い僧侶たちの活動が認知され始めてきた。今後は、若い僧侶の動きとともに、各仏教教団の結集した力で社会の具体的な問題は軽減されてゆくだろう。

社会の苦に寄り添う仏教者としての姿勢をきちんと語っていくことで、これまであまり仏教に関心がなかった人や、宗教に無関心な学生など、僧侶も素晴らしい活動をしていると言う若者が多くなったと感じている。

今回震災で初めてこうした活動に参加した青年僧も多かったが、震災以前にも地道に活動している青年僧がおり、そういう若い僧侶が自分の周りにいるという土壌が同じ世代の中で出来ていたことも、支援活動の広がりに繋がった理由の一つとして挙げられるだろう。